霧縛りの職工

大したことないことを大したことないように書きたい

シリーズDで100億円を調達したベンチャー企業、株式会社データX (当時、株式会社 フロムスクラッチ) に対する賃金未払訴訟について

公開にあたって

本記事は、以下の記事で公にした問題について2020年3月第二週時点での経過や主張を記載するものです。

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内容としては2020年2月に予定していた第一審が始まる前、もしくは係争中に公開を予定していた訴訟にあたっての私としての主張点をまとめて公開する意図で執筆しました。しかしながら、2020年2月14日の第二回公判にて、相手方の裁判非対応のため判決としてはこちら方の主張が全て通る形で結審し、いくつかの都合により公開を見合わせておりました。

2020年12月現在、訴訟については相手方が控訴を希望していたため代理人に交渉をお任せし、11月25日に裁判上和解致しました。この際、会社側からは訴訟事由に関しての謝罪文を受領できる事を和解条項の中で決め、責任者として代表取締役及び CTO 両名の署名・捺印の上受領しました。私としては名実共にこちらの主張点を認めた上での謝罪と認識しています。

以下、2020年3月以降の出来事や解決については別途記事にする事とし、一部構成を前後させる以外執筆当時のままの公開します。

本記事に記載する内容とその意図

裁判に際しての当方の主張を示す事

本記事では、退職の後昨年 11 月に提訴した裁判にあたって当方が有していた主張を纏めると共に、起きていた問題に対して当方が求めている事、それに対する会社側の対応などを和解交渉の過程も含め記載します。

一審自体は 本年2月に第二回公判で結審しておりますが、本来この記事は年末での公開を予定しており、遅れた理由は、執筆に際し純粋に私の気が重かったという以上の理由はありません。主張点やその粒度についてはそのまま当初から述べる予定であった事について記述する他、経過については多少現時点までの内容を加えて伝えるものとします。

知る必要がある人に伝わるように

記事を公開する目的としては「是正勧告について」の趣旨である、他従業員また既に同社を退職している仲間へ広く訴訟の状況が行き渡るようというところで変わりありません。

しかしながら、F 社は著名な外資系企業を含む数社から、昨年シリーズDにおいて公称100億円の投資を獲得している企業であり、界隈では衆目を集めております。そういった企業に対する訴訟がこのような形で経過や主張が公表される事はそれなりに珍しいケースかと思います。「知る必要がある人に伝わるように」という意味では私の意図に沿うものですので、関心をお持ちの方にはご一読頂ければ幸いです。

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おことわり

一部の情報については企業側が公表している場合に限り実名を用いる事を方針として予めお断りします。*1 また、これまで会社側が公開している情報に対して言及する事は意図的に避けてきましたが、既に裁判に入っている状況のため必要に応じて言及する箇所があります。引用部分に関して、事情により固有名詞が出る箇所を一部改変しイニシャルに変更している場合があります。

本記事以前に公開している事

私は b→dash という BtoB SaaS を提供するベンチャー企業、株式会社データX (当時、株式会社フロムスクラッチ法人番号 1011101056020、に2017年05月〜2018年12月まで開発エンジニアとして勤務していましたが、うつ病の療養のため2019年3月までの休職期間を挟み退職をしています。

bdash-marketing.com

休職に際しての会社側の対応に強く問題を感じ、2018年1月から労働基準監督署に協力を依頼し、参照できない状態にされていたいくつかの勤務状況に関する情報を会社側に開示させると共に、未払であった深夜残業の割増賃金の支払いを受けました。その辺りの経緯については「是正勧告について」をご参照下さい。

本件はその後、代理人を立てその他の未払賃金について請求を行っていたものの会社側の期日を守らない対応のため和解交渉が進まず、未払賃金請求の時効を放棄する文書も送付されなかったため、2019年11月上旬に提訴の運びとなっています。*2

一審自体は本年2月に相手側の裁判非対応の為第二回公判で結審しており、仮にそのまま利息を付与すれば問題なく500万円を越える程度の金額を請求する権利が生じています。

しかしながら、会社側は控訴審に持ち込めば減額できるという主張で100万円以上の減額を和解案として希望しているというのが現状です。

主張として

F 社の開発部における労働形態は裁量労働制とは言えなかった

実際の出社時刻が 9:00 に定められているのは裁量労働制かどうか

裁判上のための詳細な主張は裁判上で代理人に行って頂くとして、労務管理の表面的な点を言えば以下の様な労務管理形態は裁量労働制に即していると言えますか?という話になります。

  • 出社時刻が 9:00 に定められており、遅刻は一律1時間前までの管理者への電話連絡が義務付けられている。

  • 都合による出退勤時刻の調整には管理者の承認が必要である。

出社時刻に関しては Confluence に規則として明記されており、子供の送り迎えなどのケースで個別に 10:00 まで遅らせる事を認められる事もありましたが、部全体での朝礼がありメンバは原則出社する必要がありました。

MTG を設けることに必然性があれば裁量労働制でも定例を設ける事は認められているのですが、スクラムチームでは 10:00 に別途、日次のタスクのコミットメントの確認を行うチーム MTG がありましたので、部全体での定例の主目的は点呼であると言えます。

労働時間管理施策ワークポイントシステムの抜け穴としての「非業務アカウント」の存在

「是正勧告について」が Twitter を起点に幾らか反響を呼び、はてなの新着ランキングに載った後、F 社から労務管理に言及した記事がいくつかプレスされています。

- 「働き方改革関連法」施行に伴い 4つの働き方変革施策を7月1日より導入開始いたします | 株式会社フロムスクラッチ

- 見据えるは海外。フロムスクラッチ流「3つの優位性と再現性の追求」 - INITIAL

initial.inc

INITIAL に掲載されている記事では「パブリックカンパニーになる意味」という項で言及されています。

見据えるは海外。フロムスクラッチ流「3つの優位性と再現性の追求」 - INITIAL より引用

-- 資金調達前、今年7月から4つの働き方変革施策を実施されています。非常にドラスティックな内容にみえますが、社内から反発はありませんでしたか。

実は、組織内において反発の声はあまり多くはありませんでした。

この施策ができるまでの過程を話すと、1年程前に取り組み始めた「ワークポイントシステム」の導入が起点になっています。

全社員が一定のポイントを月初に保有します。働く時間の長さに応じてポイントが消化され、朝の6~9時、日中9~18時など時間帯にその消化率が変わります。夜遅くまで残業するとポイントが一気に減るイメージです。

月の途中で保有ポイントがなくなると強制的に出勤停止になるため、ポイント消化率の低い早朝に出社するなど、社員が自発的に勤務時間をコントロールするようになりました。

しかし、今年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、それをしっかり読むと裁量労働と固定労働の差分がほとんどないことがわかります。その結果、当時行っていた弊社の仕組みでは、法律に適応しきれていない部分があることがわかりました。

100億円の資金調達をするとなると、これまでよりも大きな期待をされますし、パブリックカンパニー化が求められます。

また、国が労働生産性向上を掲げている以上、労務管理への対応は間違いなく、これから厳しくなるでしょう。それならば、徹底的に対応しようと決めました。

4つの働き方変革施策を実施する前の私たちは、野球に近い働き方をしていました。野球は9回の裏3アウトを取っても同点の場合は、何回も延長しますよね。それと同じで、勝負がつくまで戦う姿勢で働いていました。

しかし、これから私たちに求められるのは、90分+アディショナルタイムで必ず試合が終わるサッカーのような働き方です。

当然、社内には「もっと働きたい人間の権利はどうなるんだ?」といった声もありました。

しかし、その意見に対しては「ここからはパブリックカンパニーとして、ゲームの闘い方が大きく変わる」と説明し、改革が当たり前である雰囲気を社内に一気につくり出しました。

パブリックカンパニーになるとは、新たなルールを遵守し、環境に適応し続けていくことでもあります。それができず、新しくルールが変わった世界の変化に適応できなければ、人間も企業も淘汰されます。

だから、私たちは裁量労働を原則撤廃し、固定労働で9~20時で働くと決めました。パソコンの持ち帰りは禁止ですし、8時50分にならないとパソコンの電源もつかないようになっています。

電源がついたら打刻され、20時になると全パソコンが自動的にシャットダウンします。現在では、毎日全社員の勤怠情報が上がってくるようになっています。打刻時間に遅れるとカンパニー長が管理部に怒られます。「君はダーウィンの進化論に反して、変化適応できないのか」と(笑)。

裁量労働制から固定時間労働制への労働契約制度への転換を含むこれらの決断は大胆なものであるかの様に外からは見えるかもしれません。ですが、私の主張するところからすれば、そもそも始業の基準が 9:00 に統一されており、固定時間労働を残業代を支払わずに済むよう契約上裁量労働制にしていただけなので、この改革は単に実態に即したものに契約の体裁を変更したにすぎないという事になります。

少し私自身の賃金未払の問題から逸れますが、INITIAL の記事にある労働時間のポイント換算制度「ワークポイントシステム」についても言及します。

「月の途中で保有ポイントがなくなると強制的に出勤停止になるため、ポイント消化率の低い早朝に出社するなど、社員が自発的に勤務時間をコントロールするようになりました」としながら、では最終的にその社員が何時間ひと月に稼働していたのかを示さない点がまずフロムスクラッチらしいところではあるのですが、そもそもこの制度には抜け穴がありました。非業務アカウントです。

ポイントの計算方式はクライアント運用管理ソフトウェアから取得した貸与端末の起動とシャットダウンのログから計算したものなのですが、一人当たり業務アカウントと非業務アカウントの二つのアカウントを与えられており、消化ポイント数は「(業務アカウントでの消化P) ー (非業務アカウントの消化P)」 で計算されている為、非業務アカウントで稼働している分には付与されてるワークポイントが消費されないというものになっていました。

では非業務とは何かというと、私の在職当時は実態としてそのまま「非業務アカウントで出来る作業全て」です。

一応、体面としては個人に振られている業務時間に行うべきタスクは業務アカウントを利用し、非業務アカウントは自己研鑽や通常業務に紐付かない作業で利用する事にはなってはいましたし、非業務アカウントには多少の制限がかけられていましたが、少なくとも開発部においては業務アカウントで足りない作業時間を確保するための別アカウントとしての利用が主になっていました。ポイント消化が著しいメンバが通常業務時間中に非業務アカウントで出来る作業を中心に作業を進めたり、夜間監視が避けられずトータルの消化ポイントが絶対的に不足している社員が日中の業務時間を非業務アカウントで進めたりといった用途です。

この事は CTO I氏も当然認識していましたが、見た目に開発部全体としてポイントの消化状況が規定を満たしていても、実際には本来業務で消化してよいポイントの6割程が非業務アカウントで消化されているメンバが多数居る状況は黙認されていたと言えます。明らかに企業としての労働者の管理義務は放棄されていました。

私自身の賃金未払の問題から少し逸れる、というのはこの制度が本施行を迎えると同時に私はうつ病の療養のため、定時退社や体調不良時のリモートワークを中心とした時短勤務に切り替えていたためです。しかしながら、本施行時点で既に形骸化していた実態の改善に貢献しない施策を対外的に誇るべきかというと、私はそうは思いませんので、見聞きした事としてここに記します。

CTO I氏には裁量労働制に対する理解が欠如していた

都合による翌日の早退申告の拒否

CTO I氏には裁量労働制の基本的な要件を理解しているのか疑わしい言動がいくらか見受けられましたが、私とのやり取りの中で最も顕著と言えるのは、事情により翌日の早退を申告したところ「理由を言えないのであれば許可できない」と拒否された事です。

有給の申請に際して事情を問われるのは裁量労働制かどうかを問わず論外で、それを日常的に行っていた事もそもそも問題なのですが、通常業務を行った後の早退を当然の様に拒否されるのは不信を一層強める出来事でした。

不当な評価を基にした有給の使用や欠勤扱いの指導

ここで私が休職を決めるきっかけとなった出来事について言及します。

私が休職を決めた面談は、私が CTO I氏の指導に対する対応を管理部長 T氏に依頼した事をきっかけに行われました。CTO I氏はうつ病のため全体として稼働時間を減らしていた私に対して「リモートワーク時のパフォーマンスが通常業務を行っていると認められないため休み扱いにするように。リモートワーク自体もう認めないので、オフィスにこれない場合は有給欠勤扱いになる」という通達がありましたが、これを不当評価、越権行為として対応を願い出た形になります。*3

実態として月々の稼働時間が減少しているのは確かでしたので固定残業代を調整したいという相談であったり、全体として進捗を生み出せていないため休職するようにという指導であればまだ理解出来る内容ですが、そうではありませんでした。リモートワーク時単日の評価をもって過小評価される事は全くもって不快であり、裁量労働制にも則っているとは考えられませんでした。

まして私は直近のスプリント *4スクラムマスターと合意したタスクを概ねオンスケで抜けています。療養によりほぼ専任で当たっていた緊急対応が難しくなっているため開発内での対応人員を増やすための引き継ぎも詳細な業務知識はともかく最低限がふた月をかけて完了しつつあると認められていました。

当時の自分の病状として、日により集中の度合いが大きく異なっていました。引き継いだタスクのレビュー系統や、クォーターの課題とされていた開発部での運用負担を軽減する為のナレッジ系のドキュメント整備などと着手順を前後させる事で作業効率の維持をスクラムマスターとの合意に基づいて図っていた為、それらの作業自体を成果と認められないとされる事は全く理解の及ばない事でした。

面談には相談を持ちかけた管理部長 T氏の他、CMO M氏、直接の上長に当たるスクラムマスターが会社側として参加しました。その場で CTO I氏の評価に対する主張を述べましたが、少なくともその場ではスクラムマスターを含めた会社側メンバからは異論は上がりませんでした。

平日の残業代と休日の稼働に対して支払を求めている

裁判上の争点は大きく二点です。

  1. 日々の勤務の実態や、管理者である CTO I氏の行動から F 社開発部における稼働は裁量労働制に則っているとは言えないため、F 社には平日の残業時間全てに固定残業代との差額を支払え。

  2. 契約している労働条件と照らし合わせてそもそも会社側に支払義務がある休祝日の稼働について F 社は一切支払を行なっていためこれを支払え。

上記の主張の証拠は私が休職中、問題を提起すると決めた後に可能な範囲で集めたものです。

休職を決めた面談の後、週明けの月曜日には Slack や勤怠管理システム、RedmineGitHub といった勤怠の実態を割り出すために必要な情報があるツールへのアクセスは制限されてしまったため、労災の申請に必要な情報を引き出す事すら困難になっていました。独力で確保できた証拠の大部分は当時アクセス権が残っていた Slack の一部チャネルから引き出した深夜、休祝日に行なった業務上の同僚とのやり取りや、それをスクラムマスターや CTO I氏が認識している事の証跡が大部分です。

昨年5月の GW 明けの催告では、以下の情報の開示を会社側に請求しています。

  • 開発用端末のシステムログ

    • 付与されていたアカウントの稼働状況を近似するために有用です
  • 勤怠管理システム

    • 勤怠管理情報

    • 工数管理情報

      • 手動ではあるものの、入力し管理者が承認していた稼働時間の把握に有用です
  • Slack

    • 勤怠に関する投稿や開発作業のやり取り、深夜に行なっていたリリース作業の報告が分かるため、残業や休祝日の稼働の実態を近似するために有用です。
  • Redmine 他のチケット管理ツールへの入力

    • スプリントに事前に積んだタスクや突発的に生じた作業チケットから、休祝日の稼働を前提としたスケジューリングの証跡や作業の実態を確認できます。
  • GitHub へのコミットログ

    • 必ずしも作業時間に一致するものではありませんが、少なくともコミット時にその時作業を行なっていた事が一定判断可能です。

    • 特にブランチ運用はリリース作業と関連していた為、平日深夜帯や休祝日に行なったリリース作業に関して作業の実施日時を判断するために有用です。

  • セキュアルームへの入退室記録 / 本番・ステージング環境への踏み台サーバへのアクセス記録

    • 稼働時間の把握に有用です。

2019年6月も終わろうかという頃にようやく開示されたものは勤怠管理システムに私が入力していた日次の情報のみでした。他は私の退職後に削除済みであり、復元可能なものでも集積に非常に時間がかかるため概算で交渉を進めたいという提案を会社側から受けています。

確保できた証拠としては、裁量労働制の否定と日常的に発生していた残業時間を示す分には裁判上十分なものが揃っていると認識しています。休祝日の稼働に関しては連続した時間帯を多く立証するのは困難ですが、そういった状況があった事、それを CTO I氏が把握していた事自体は会社側も否定ができないものになっています。

提訴から現在まで

未払請求の催告が期限を迎える昨年11月8日に提訴

前回の記事投稿の後1週間ほどして、数ヶ月延期されていた会社側からの和解提案がありました。

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金額的には見方により十分と言えなくもないものでしたが、様々な付帯条件の提示があり検討が必要になる為、未払請求の時効を放棄する文書を会社側から送付する事で話を進めていました。しかし、これも期日が守られず催告の時効期日を迎えた為、手順に提訴致しました。

一審前の和解交渉は12月まで行われましたが、あくまで相場としてこちらが提示している証拠から見た相場で解決金額を決めたい会社側と、会社側が和解金額の算出を含め問題にどの様に対応するのかを重視しており満たされない場合には裁判での審判でよいと考える当方の間で付帯条件を含めた折り合いがつきませんでした。

12月を迎えても会社側は「支払は予算の範囲内で」「口外禁止条項を含む口止めに当方が応じる事」という条件に基本は変わりなかった為、後々請求することが明らかであった労災の休業補償給付金を、監督署への請求に先んじて12月中に支払う事を和解交渉を継続する条件としました。

この支払自体は12月末に入金があったのですが、和解交渉自体は会社側からの再提案がないままに年を越えて一審を迎えました。

一審は相手方の裁判非対応のため第二回で結審

当記事を書きあぐねたまま迎えた本年2月14日、代理人から第二回公判で会社側の裁判非対応のため一審が結審した事、400万円後半の請求が裁判上そのまま認められたと連絡を受けました。

まず1年掛になると想定していた一審が早期に決着した事、それ自体は意外な結果ですが、何らかのミスであれ戦術的な判断であれ F 社の行動としては驚きではありません。

私からすれば F 社はこの問題にあたって提示するといった提案や文書を再三遅らせていますので裁判に何かを間に合わせる事が出来なかったとしても、そこまで期限を守れないのかと納得しつつ呆れられる範囲です。IPO に取り組んでいる企業ですので、下手に裁判で争って証拠を公にされたくない、問題を長期化させたくない、早めに支払を完了させると同時に発言に制約を与えて完全な沈静化を図ってしまいたいという考えがあったとして、散々問題の解決を遅延させた上で一審をまともに行わず控訴審前の和解交渉に早期に持ち込もうという発想に至ったとしてもそれはとても F 社らしい判断だと感じます。

口外禁止事項を設けない事を前提に控訴審前に和解案を交渉中

現在の交渉では会社側から口外禁止条項を設けない事を前提とする和解案が提示されています。

解決金額に関しては一審をきちんとやっていれば、控訴審に臨めば減額できるという主張で、判決から100万円以上減額した金額が提示されています。

金額的には一審前の提案と然程変わりはないのですが、口外禁止条項の排除はそれなりに大きな意味があります。あとは実質的な口外禁止条項の働きをする条項が紛れ込まないように気を付けつつ、最終的に公開する内容に関しての取り決めがどうなるかといったところです。

方針として

口外禁止条項については原則拒否

口外禁止条項については「是正勧告について」からこういった形で記事を公にする趣旨がありますので、最終的な決着の形を示せなくなったり、私自身が「どういった根拠で主張したのか」といった問いに答えられなくなるような状況は極力避けたいという意図から条文に含める事を拒否する構えを当初から検討していました。

問題に対する口封じ的な性質から会社側が和解に応じやすくなるため慣習的に設けられる事が多い事は認識しておりますが、会社側の対応過程や出てきている提案内容を見ても今回当方としては応じる必要はないと考えています。

掛かる違約金の条項に関しても同様です。

控訴審までに和解するかどうか

控訴審までの妥結は必ずしも重要ではない

受領できる金額や口外禁止条項を設けないという条件が見込めているという意味では、部分的には特をします。とはいえ最終的に発信できる内容が意図にそぐわないものであったり、発言を躊躇うような要素が残る様では趣旨にそぐうものではありません。

会社側の都合により早期決着した一審ではありますが、会社側がどうしても本来そこで主張すべきだった事を控訴審で主張したいという事であれば、応じるのはやむなしというところです。

不可解な条文に同意できないというのは一重に役員への信頼感の不足につきます。

経営層への不信感と CMO M氏からの怪文

在職当時の管理者である CTO I氏はもちろんですが、労災申請に必要な勤怠情報の取得をこちらの権利と述べていたにも関わらずアクセス権を奪い労働基準監督署の聴取を2回当日キャンセルしてまで勤怠情報の開示請求を遅延させた管理部長 T、個人的なアドバイスと称して怪文を送りつけてきた CMO M氏、この問題に関わった役員は押し並べて当事者としては信頼に値しないと言わざるを得ません。

以下に、2019年1月下旬、労働基準監督署に動いてもらうために送付した請求書の期日当日に CMO M氏から Facebook Messenger で送付されてきた文面を載せます。

CMO M氏からの文面 (Facebook Messger より)

関口さん

管理部長 Tさんに個別に確認しにいき、内容把握しました。

ここからは、経験則をベースに、僕個人の意見を書くので、参考にしていただいても無視していただいても大丈夫です。
(個人的に関口さんのことを"買って"いるので、どう考えても不利な方向に進んでほしくない...というちょっとした気持ちがあります)

以下、長文なので暇なときにでも。


■キャリア形成においてメリットはゼロで、デメリットしかない。
おそらく普通に戦うことになると思う。するとどうなるか。転職に影響が出る可能性が高いです。高いというより100%影響が出るかと。こちらの対応に時間がとられて...という影響のみならず、シンプルにエージェントや転職先の企業からリファレンス(信用調査)をする際に、会社としては間違いなくこの件を伝えるでしょう。すると、「労務問題で何かしらのトラブルがあった方を積極的に採りたい!」と企業側はならないので、転職時のリスクをはらんでいます。こういうときは握手してお別れするのがいいかと(得たいものが他にある場合は、別のやり方で進めていく方が賢い)

■客観的に見て関口さんにとって不利
<私個人に掛かる誹謗中傷にあたる文面が含まれるため、略>


以上が感じていることです。
関口さんが本当に得たいものは何かを考えて、それを得られるように動いた方が合理的だと思います。今回のは、関口さんにとってのダメージがめっちゃくちゃデカいはずなので(多少なりとも異性関係で問題が出てしまっていることは事実なので)、違う方向に収束させたほうがいいなーと、個人の意見として考えています。まぁ任せますが。

本件に関しては、僕は職務遂行上関係ないため、何かあれば"フラットな立場"として=個人的な見解を言うことができます。何かあれば声かけてください。

ではでは。

要約すると「この問題は諸々含めて会社側に有利なので引き下がるのがあなたの為ですよ」という内容ですが、請求の期日に送られたこの文面は、受け手の立場から言って怪文と言って差し支えないでしょう。

文面の一部に私個人に対する誹謗中傷に類する文面が含まれる為略していますが、その内容に CTO I氏やスクラムマスターから受けていた説明と明らかに異なる主張が含まれていた為、即日、正式な退職までの間に会社とのやり取りを進める為設けられていた Slack のチャネルで正式に説明を求めた際の CMO M氏の言い分を最後に添付します。

説明を求めた際の CMO M氏からの言い分 (Slack より)
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怪文に対して説明を求めた際の CMO M氏からの言い分 (Slack より)

口頭なので (証拠は) ないですよ。
また、相談を受けた人はこの中 (Slack チャネルのメンバ) にはいません。

そして、なぜ事実と異なるのか、少し考えてみてください。答えはわかるはずです。

昨日個別にもお伝えしましたが、かなり状況は悪いと思います。

以上です。

答えは考えれば分かるはずなので、説明は不要との事でした。

ここまでに記載した内容で私の会社側に対する不信感を多少なりとも理解して頂けたかと思います。

おわりに

残りは決着後の公開を予定

長々とした記事になりましたがご一読ありがとうございました。

裁判にあたっての主張点や、事前の和解交渉の為に公開を見送っていた内容の大部分はこの記事で一定記載できたかと思いますので、今後大きいところでは決着の形を何らかの形でお伝えできればと思います。

控訴審以降に進む場合には都度、何らかの形でお伝えする予定です。

*1:特に明記がない場合、Green に掲載された求人情報を参考とします。

*2:こちらの経緯は「是正勧告について」とは別に はてなブログ/株式会社 フロムスクラッチ における賃金未払および、それに対する訴訟の方針について に起こしています。

*3:一連のやり取りは Facebook Messenger 上で行ったため証跡があります。

*4:5分で分かるスクラム用語集