GODZILLA King of the Monsters についての備忘録
アニゴジで前振りをしたからにはもちろんこちらも
6/09 IMAX
TL;DR
怪獣 が観たいなら今年はこれ!
過去作オマージュがふんだんにあしらわれたシナリオだけれどどうしても霞んで見えるレベル
かつての 平成バーサスシリーズ ファンはどうぞ
作品概要
Marvel Cinematic Universe と同様複数の映画シリーズを組み合わせシナリオを展開していく モンスターバース の一本。 バースとしては第三作であり、その中のゴジラシリーズとしては第二作である。
ゴジラシリーズ第一作、通称ギャレゴジの続編だけれど本作の監督はギャレス・エドワーズではない。 監督・脚本、マイケル・ドハティ。 正直ギャレゴジは観ていなくても特に問題はない。
ネタバレ度
ネタバレに関して遠慮は要らない作品なので気にしない。 伝統の一戦である ゴジラ vs キングギドラ が主軸。 怪獣の激突が全て。 それらの前にシナリオはやはり添え物になる。
トレーラー
the 怪獣対戦
まず大前提として、本作は怪獣を観るための怪獣映画だ。 怪獣達をただ暴れ回る偶像にしないための導線はあるが、それらは等しく怪獣の前に捧げられる供物なのだ。
ヒューマンドラマとして
公開前に話題になった togetter はこちら。
評論家達が登場人物のドラマの貧弱さについて低評価を出したという話題に反応したものだけれど、まだ削れた とういうのが観終わっての第一感。
ドラマが退屈だったかというとそういう訳ではない。 旧作のオマージュも取り入れていて話の密度は低くない。 渡辺謙演じる芹澤博士ゴジラとの惜別のシーンは言っても本作を代表する場面だし、怪獣大戦に時間を割いている分時間の比率は多いという事はない。 単純に怪獣があまりに魅力的なので、そこはいいから もっと怪獣を観せて欲しい という感覚が先に立ってしまったのだろう。
Titans
作中において怪獣たちは太古の神々として タイタン と呼ばれる。主役達をそれぞれ正面に置いたポスターはこちらから。
https://godzilla-movie.jp/monsters/
ゴジラ
言わずもがなの主役であり、終始映画の 顔 として活躍をみせる。 人間にとっては驚異であり希望だ。 格闘戦を力強く魅せる筋肉質なデザインが本シリーズの特徴だけれど、なんと海中を遊泳するシーンもある。 ゴジラファンお馴染みの音楽と共に出現するシーンは「よくぞやってくれた」の一言に尽きる。
マグロを食べないからといって核由来のエネルギーならなんでも食っていいのかというのは突っ込み待ちか?
ギドラ
確認されているタイタンの中で唯一宇宙からの来訪者であり、地球にとっての驚異にして侵略者だ。 幼少ぶりにみるとデザインの秀逸さが際立つ。 三本首は東洋風の龍をモチーフにしていて画面一杯に蠢くと得体の知れなさがある一方で、 胴体部や翼を含めると西洋風のドラゴンの姿になりゴジラと対になる王としての風格が出るのが改めて見事だ。
それぞれの首に多少性格付けがされているが、左首ができの悪い末っ子という評価多数。
2019/06/30 追記分
Twitter で流れてきたキングギドラのモーション撮影風景。 まさかこの振る舞いからあの迫力の映像が生まれていたとは。。。
もしこれを馬鹿っぽいと思う人がいたのなら、出来上がった映像がどんなに力強いかを是非劇場で見て欲しい。
キングギドラの撮影がシュール過ぎるwww pic.twitter.com/QFi17Ndk2J
— スパSound (@pichu_sound) June 27, 2019
ラドン
本作一推しのタイタン。 見せ場は時間にすると多くないし、造形としてはシンプルに巨大な鳥なのだけれど、 それが逆にタイタンの巨大さが人にとってただそれだけで驚異である事を示す重要な役割を果たしている。 ただ羽搏くだけで街に破壊をもたらし、ジェット戦闘機を遥かに超える機動性を発揮する。 身を畝らせるだけで次々と近代兵器がたき落されるシーンは作中屈指の名シーンだ。
ゴジラとギドラには純粋に力で敵わないので割とさっさと阿ってしまう三下感もまた人気の秘密。
モスラ
他の怪獣が He なのに対し She で表現され、女性性が強調されている。 モスラの出番はチャン・ツィイーの出番と言ってよく、対比として毎回アップになる。 過去作よりもより虫としての造形に忠実で蝶よりも蛾を思わせるデザインになっているが、他のタイタンがよりリアルに驚異性を増しているのでそこはバランスなのだろう。
今作のモスラの生地は中国だけれど、チャン・ツィイーを出演されるのが決まったから中国なのか、中国に決まったからチャン・ツィイーなのかどちらだろうかというのが素朴な疑問。
怪獣に対する人間
本作の演出として重要なのが人間の小ささだ。 とにかく怪獣の前でどれだけ小さな存在かを示すためのモノとして画面上に配置されている。 ゴジラとギドラの足元で人間が慌てふためくシーンはまるでディザスター・パニックだ。 最終決戦なんて冷静に考えるとそんな所にいく意味が分からないし、ツッコミどころしかないのだけれど、でも必要だ。
あまりにも小さな人間ドラマを画面の手前に持ってくるからこそ、風景のように馬鹿げた規模で繰り広げられる怪獣達の決戦が映えていた。
えっ?
ところで、どうしても言っておきたい点がある。
本作の黒幕はなんと主人公の元嫁なのだけれど、その黒幕度が引くほど高い。。。
割と早い段階で明らかにはなるのだけれど、なんとギドラを初めとする眠れる怪獣たちを目覚めさせる計画を立案して、必要な装置を開発して、実行可能なテロリストを手配しているのは彼女だ。 そんなバカなと。 一連の事件で失われた人々は返ってこないので、ある意味サノスより酷い。 なんなら娘もそこそこ協力している様子で、振り返ると母娘のセリフに何とも言えない気持ちが沸き上がる。
最終的にその思想や理念が一応正しかった事がエンドロールでわかる皮肉付き。 この筋書きを通した思い切りの良さに乾杯。
総評
怪獣対戦モノとして傑出している。 続編にも関わらず第一作を観ていなくてもいいと断言できる程度には。
近年発表されたシンゴジ・アニゴジとはコンセプト自体に明確な違いがある。 シンゴジは単体として 初代インスパイア を徹底した傑作で、アニゴジは三作かけて人間性と怪獣性を相対化した意欲作だ。 対して KOM は怪獣の巨大さとそれに対する人間の小ささを強調した娯楽としての大作に仕上がっている。 系譜としては明らかに バーサスシリーズ で、シンプルにその迫力が面白い。 ゴジラのデザインも他二作と比較してみると作品コンセプトの違いがよく分かるだろう。
とにもかくにも怪獣の迫力が第一で最重要でテーマそのもの。 細かいところを見始めると突っ込みどころは少なくないが怪獣達が吹き飛ばしてくれる。 映画館で観ることでより良さが味わえる作品というのはいくらかあるけれど、まさに大画面・大音量でこそ観るべき作品だ。